2023-01-01から1年間の記事一覧

どこにもいくな

「ん………」 眩しい。 手を飾して目蓋を開けば、朝日と少し肌寒い初秋の空気。 目の前にあったのはシーツの上にさらりと流れる胡桃色の尻尾だ。 私はベッドに横たわっていて、その端に座るアンタの垂れた尻尾を見つけた。 手を伸ばして、ひらりひらりと気まぐ…

Once upon a time

──いつか私たちが物語になったら。本棚で隣同士に置かれるような、そんな話が良いね。シリウス。 『廊下はゆっくり走るように』 小さく返事をして、ぴかぴかに磨かれた床と仏蘭西窓で切り取られた長い廊下をと、と、と、と走る。 「叱られたじゃんか、ルドル…

椿サクラハリケーン

花には、魂が宿るという。……きっとどんな花も長く生きられずに枯れてしまうのは、中に宿っているモノがひとのそれだからに違いない。儚い人生をわがままに生きるその様や、別れ際のせつないところなんか、ほんとうそっくりなんだ。 私はそんなあなたに一目惚…

逢いにいらして

「会長、素敵なお知らせと残念なお知らせがあるのですが、どちちから聞きたいですか?」 「す、素敵なお知らせだけで」 「では残念なお知らせから」 ひと仕事をおえて、今は春のうたかたに満たされた昼下がりの中庭。 エアグルーヴが怒っている。 かろく結ん…

あしためがさめたら

そいつはいつもふらりとやって来るから、あたしはほとほと困ってるんだ。 「やぁ」 「なんでこんな雨が激しい日にわざわざ来るんだよ」 「今日、レースだったから」 「知ってるよ、こっちじゃなくて家に帰れよな」 「レース場から寮のほうが近かったんだ。細…

またたび

ふぁ、とあくびをしながら、体を起こす。 両腕をぴったり締めて耳先までぎゅうっと身体を絞った。 「わ、変な起き方」 「……、……、来ていたのなら起こしてくれたら良いのに」 みられていたなんて。 ここ最近は忙しかったのだ。私はこの頃、新年度の催しである…

春のまにまに

トレーナー君の手は私の頭にあった。 ふとした気まぐれで入った、いつもどおりのトレーナー室。ミーティング用のソファを見れば、いつもどおりのトレーナー君。 ソファに座って書類仕事に打ち込んでいるようだった。私は隣のスペースを陣取って、肩にそっと…

regret

着々と積み上げてきた日常が決壊してしまうことがある。 私はそれが恋だということに後になってから気づいたんだ。 それはトゥインクルシリーズで全てを成し得た後の、忘れられない始まりだった。 ◆ 私が欲しいと君は言った 「絵を描きたい? 君の部屋で私を…

トレルドの話2

ご無沙汰です。私は元気です。 最近、自分の筆の遅さにうぎゃーとなっております。 いえ正確には執筆速度じたいは遅くなくて、書き出すのが遅いかんじなのですが。 ――なんというか、ちゃんと読んでくださってる方がいるのに、このペースは申し訳ないなと。 …

トレルドの話

なかなか書けないので気分転換に二次創作、推しの関係性の話を日記にします。今回は気持ちは丁寧に思い描きます。気持ち……。私は今トレルドにどっぷりいってしまい、ルドルフとトレーナーの関係性について毎日ハチャメチャに幻覚を見ているのですが自分の二次創作…

アイルランドマイの話

私自身内向的でこういった日記をする意義を考えたりするのだけど、意義は後から生まれると信じて…。世の中しなくていいこと、多すぎます。しなくていいと捨ててしまったこと。でも、何処にも残らず捨ててしまったものがお宝だったりするのかも知れない。Twit…